『異本阿波志』は、阿波国の成り立ちから名所旧跡、古代の伝承、 中世から近世に至る有力氏族の興亡を克明に記した貴重な郷土史料である。本書は、古代の国造りや神々への信仰、土御門上皇の阿波遷幸といった歴史的記憶にとどまらず、戦国期において阿波を席巻した三好家や一宮氏の系譜とその壮絶な最期を詳細に記録している。
さらに、天正十三年(1585年)における豊臣秀次公を大将とした阿波侵攻、それに伴う土佐方の降伏と開城、 tender蜂須賀家政公の阿波入国と九城の守将配置、祖谷・仁宇谷における逆徒討伐など、阿波国が平定されていく緊迫した過程が一切の誇張なく描かれている。本稿では、この一級史料の歴史的文脈を損なうことのないよう、原本の記述を一切省略することなく、ありのままに完全現代語訳を行った。